81 芸者にばけた狐

81 芸者にばけた狐

 むかし、新堀は雑木林がつづき、夜になるとふくろうが鳴く、淋しいところでした。
 夜がふけて小川新田の親戚のご祝儀(結婚式)に呼ばれた金作さんは、いいきげんで肴(さかな)をもって土橋を渡りお伊勢山にさしかかると、どこからともなく、高島田の芸者があらわれ、

 「道案内をしましょう」

 と、先にたってあるきだしました。

 ところがどうしたわけか、いけどもいけども村につきません。そのうちに夜があけてきて、ふと気がつくと芸者の姿は消え、持っていた肴も消えていたといいます。(p178)